医師として働くということ 名張市立病院 呼吸器内科 中村祐基先生
2023年07月19日
呼吸は嘘をつかない~三重県の呼吸器内科医として~
呼吸は嘘をつかない~三重県の呼吸器内科医として~

ご自身が生まれ育った三重県で呼吸器内科医として、急性期から慢性期までの患者さんの治療に日々邁進されている中村先生に、呼吸器内科医のこと、これからのことをおうかがいしました。

呼吸器内科医になる

内科の中でもカバー領域が広い診療科、かつ急性期から慢性期までの疾患の治療に携わる呼吸器内科。中村先生は「呼吸器内科医になったのは、以前つとめていた病院の恩師との出会いが大きいです。医者とはなにか、呼吸器内科の仕事とはなにかということを教えてもらいました。」と語ります。呼吸器内科を専攻することに迷いはなく、研修病院も恩師が勤務する病院を、研修ローテート先も呼吸器内科医になるべく選ばれました。
「学生の見ている世界、研修医の見ている世界、いざ実際に呼吸器内科として直面している世界では、真逆に感じるほど違うと思います。幸運にも私は学生時代から恩師のおかげで、それほどギャップを感じることなく呼吸器内科医としての一歩を踏み出すことができました。」という中村先生。「ただ…」とその後に言葉が続きます。「当初は教科書だけの知識がすべてだったのですが、すべての患者さんに必ずしも最善の結果をもたらすことができない現実にもどかしく感じました。今でも多くの文献や、多くの尊敬する先生方の知恵をお借りしても、どうしても救えない患者さんがいるということが、一番心が痛くなります。一方で、自分が学べば学ぶほど、患者さんに対して良いアプローチができるという意味では、呼吸器内科の魅力と可能性を感じています。」自らの限界点を突破しようと、中村先生は日々の臨床にあたります。

「呼吸」の魅力~疾患横断的なアプローチ~

患者さんひとりひとりの「呼吸」は異なるという大前提を基に、病態を観察し、異なるアプローチで試行錯誤を重ねながら、尊厳を持って患者さんに向き合う。チームでの医療戦略はもちろんのこと、医師個人の技量によるところも大きい呼吸器内科医という仕事。自身が学べば学ぶほど、患者さんに合ったアプローチができる可能性が高まります。「『呼吸』から疾患横断的にアプローチをすることができるのが呼吸器内科の魅力だと思います。」と中村先生。「それに『呼吸』は嘘をつかないんです。それも魅力ですね。」と教えてくれました。

患者さんの様子をうかがう中村先生
患者さんの様子をうかがう中村先生

医師は「指揮者」~時に平然を装って判断を~

医師の仕事は決断の積み重ね。日々の臨床において決断と振り返りを継続することで、判断の精度を向上させていくほかありません。また、医師は多職種から成るチームの最適を導く「指揮者」としての役割を担っています。そのチームの指針となる適切な判断を下せるように、日々の臨床がトレーニングであることを肝に銘じていると、中村先生。「やはり決断には精神力が必要です。僕は豆腐メンタルだったので、若い時から特に大変でした(笑)」患者さんはひとりひとり肺の状態を含めて全く異なる病態であるため、知識のアップデートを怠ることはできません。「急変対応の際はチームで適切で最善の処置ができるように、内心焦っていたとしても、「リーダーである自分は冷静だぞ」と皆にみせるべく平然を装いながら、メンバーを同じ方向に導くように『指揮者』としての役割を心がけています。」

三重県で二刀流の呼吸器内科医として

最後に中村先生は「急性期から慢性期まで呼吸不全に対応できる呼吸器内科医となりたいと思っています。」と力強く教えてくれました。「三重県では、急性呼吸不全などの急性期の呼吸器疾患にも対応が可能な病院は少ないのです。それこそ重症COVID-19などは受け入れ病院が少なく、以前に所属していた病院では多くの超急性呼吸不全症の患者様が集中しました。なんとか乗り切ることができましたが、その経験から急性期呼吸不全例への集中治療に特に興味を持つようになりました。需要もありますし、やりがいもあります。ただ、その一方で長期間人工呼吸器を離脱できない患者さんや長期リハビリを要する患者さんなど、慢性呼吸不全も診療できる施設が少ないという事実もあります。『呼吸不全』全般に対するクオリティオブライフを向上させる診療に情熱的に取り組みたいと考えています。」中村先生の呼吸器内科医としての挑戦はまだ続きます。

中村先生
中村先生

中村祐基
名張市立病院 呼吸器内科

日本呼吸器学会認定 呼吸器専門医
日本内科学会認定内科医
三重大学医学部卒

2015年4月より松阪市民病院 臨床研修医
2017年4月より松阪市民病院 呼吸器センター 呼吸器内科
以後重症COVID-19などの重症呼吸不全をはじめ、呼吸器領域全般に取り組む
2022年10月より現職

好きな言葉は「情熱をもって、自分の使命を愛せ(オーギュスト・ロダン)」休日は、旅行や温泉でリフレッシュしたり、バドミントンや社交ダンスなど運動をしたりして過ごす。「最近はクラフトジンの美味しさに気づき、ハマっています。」とのこと。


           このコーナーでは自薦他薦問わず、お話をおうかがいできる方を募集しています。

※当ページ内コンテンツの許可なき転載、複製、転用等は禁止