看護師として働くということ 徳島大学病院 集中医療病棟HCU副看護師長 クリティカルケア認定看護師 河原良美さん
2023年04月14日
「憧れ」がわたしを走り続けさせてくれる
「憧れ」がわたしを走り続けさせてくれる

クリティカルケア認定看護師、副看護師長として徳島大学病院で患者さんの治療とケアに日々邁進される河原良美さん。目まぐるしい日々の中、後進の育成だけでなく、さまざまな組織的なお仕事にも精力的に取り組まれています。今回は「看護師として働くこと」についておうかがいしました。

患者さんの様子をたずねる河原さん                                                  
患者さんの様子をたずねる河原さん

「はじまりは『憧れ』なんです。」河原さんは笑顔で教えてくれました。看護学生時代の病院見学である看護師(後に上司となる)が案内役だったこと、他とは少し異なるICUの特別なユニフォームで、魔法のような言葉で集中治療室のありとあらゆることを説明してくれたこと。その姿に一目ぼれした日のこと、それは物語の序章のような運命的な出会いだったといいます。こんなにも働く姿が眩しい、この人のようにかっこよくなれる場所がこの病院にはあるのだと思ったことを今でもはっきりと覚えているのだそうです。
徳島大学病院・消化器外科病棟で働くこととなり、充実した日々を過ごしていた河原さん。新しい知識や技術を習得し、楽しく働いている中での突然のICUへの異動。そしてICUでは、あの日、一目ぼれをした看護師が直属の上司となりました。「今思えば、運命ですね」憧れの人と働くことができたことは、モチベーションだけでなくキャリア形成にも大きな影響を与えてくれたと振り返ります。

道が拓けたとき~副看護師長として、認定看護師として~

チームと打ち合わせをする河原さん
チームと打ち合わせをする河原さん

ICUへ異動後、多くの困難を乗り越えながら、3年目で副看護師長となった河原さん。副看護師長になった頃の口癖は「スタッフを守ってあげたい」。急変や緊急入室への緊張感やストレス、専門性の高い多職種とのコミュニケーション、患者さんの安全を守るためのプレッシャーからもメンバーを守ってあげたい、守るのが副看護師長の役割だと信じていたその当時、上司からの一言で管理能力だけでなく知識の重要さに気づきます。上司の「守るにしても知識と技術がなければ守れない」「もう少し自分の思考過程を言語化できるようになる必要がある」との的確なフィードバックが、集中ケア認定看護師過程に進むことを決意させます。「資格取得後にやっと道が拓けた感覚です。管理役割を持つ副看護師長の役割と質の高い看護実践を行う集中ケア認定看護師の役割はまったく別物ではないと考えています。その2つの役割を統合することが、各人の看護師としてのオリジナリティ、強みだと思います。よく両立の難しさを聞かれますが、その2つの統合の先に道があるのだと信じています。道が拓けた感覚を得てからは、もう使命のように、様々なやりたいことがどんどん溢れて、やっていくうちにいつの間にか今になっていて、ずっと走り続けているような感じです。」

苦労のピークにはチャンスがある

ICUへの異動、副看護師長になってから、環境の変化に苦労したこともありました。若くして副看護師長となり、多くのメンバーが年上ばかり、経験も知識も足りず、何度もくじけそうになったことがありました。しかしその時々で、上司や様々な人のサポートで乗り越えてきました。「若い時の苦労は買ってでもしろと言いますけど、本当にそうだなとこの歳まで生きてきてつくづく思います。だから苦労のピークで辞めていく人を見ると残念だなと思います。このピークを乗り越えることができれば、成長もできるし、仲間もすごく増えて、とてもいい経験になるのにと。だからこそメンバーには、臆することなく様々な経験をしてもらいたいと思っています。そしてその苦労やつらい場面で何かあれば、それをサポートするのが役割だと感じています。」 

看護にはチームでやる以外の選択肢がない

チームのみんなと「パワフル」ポーズで
チームのみんなと「パワフル」ポーズで

「チームワーク以外の選択肢がありません。看護師はチームプレーで完結するプロフェッショナル集団です。」 個人の力量だけでなく、チームでケアを繋げることが大切な看護。ケアが途切れたら0にもなりうる。むしろ、自分のケアが悪ければ、マイナスになってしまう場合もある。いかに標準的なケアをとぎれることなく、繋いでいけるかが重要になる。だからこそ、自分がかつて躓いたところなどを思いだしながら、率先して知識をかみ砕いて伝え、フィードバックを行い、できる限り風通しのいい職場の雰囲気を作ることに専心する。「先日、夜勤の際に患者の急変がありました。3人で急遽胸骨圧迫をしましたが、処置が終わった後に、チームメンバーが『こんなに委縮しない雰囲気で的確に胸骨圧迫をし、救命できたのはいい経験になりました』と言ってくれました。」

誰かの「運命」の人になりたい

患者さんの状態につて確認する河原さん
患者さんの状態につてメンバーと確認する河原さん

今後は後輩育成にもより力を入れていきたいという河原さん。「後輩を育成して次の世代に繋いでいくことは使命です。それが、患者さん、ご家族、組織、そして徳島県にとっても継続的発展という観点から重要だと考えています。」 お世辞にも勉強ができるといい難かった自分が、看護師として使命を持って働き続けられているのは、かつての上司のおかげだと何度も教えてくれました。「わたしは育ててくれた上司の背中を見て、わたしもそういう人になりたいなと思いました。今の自分の仕事のスタイルは、今まで得た経験や、知識を統合したわたしのオリジナルです。ですので、わたしのことを見て、少しでも参考にして、次世代に繋いでもらえたら最高です。」そのためには「運命」のあの日のかつての上司ように、まずは自分が楽しくやりがいを持って働くこと、そしてメンバーがイキイキと働くことのできる職場環境が何よりも重要だと語る河原さん。「わたしにとっての原点はICUのかつての上司です。その人との出会いがあってよかったなと心から思っています。だからわたしも誰かのそういう存在になりたいなと思います。」

河原看護師
河原看護師

河原良美
徳島大学病院 集学治療病棟HCU副看護師長
クリティカルケア認定看護師
消化器・移植外科病棟勤務を経て、12年間ICUで勤務、
現在HCU在籍中

好きな言葉は「十人十色」。
休日は自然の中で過ごすことが多く、徳島県動物園の個人サポーターとしてブチハイエナのガブくんが推しだそう。






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