看護師として働くということ 岩手医科大学附属病院 集中ケア認定看護師 鎌田景子様
2024年04月12日
いつも組織に背中を押してもらって
いつも組織に背中を押してもらって

「自分の性格的にどんどん前に出て『やりたい!やりたい!』というようなタイプではないので、人に「ポン」と背中を押してもらって、『じゃあ行こうかな』と進学を決めました。」と生まれも育ちも盛岡の鎌田さんが、はじめて盛岡を出たのは東京にある大学の認定看護師教育過程への進学でした。「本当に何も考えずに10年少しICUの看護師として働いていました。タイミング的にちょうどその先のキャリアを考える頃でした。様々な迷いもあった中で、認定看護師資格を持つ先輩と教育などに携わる機会を通して、患者さんの状態をきちんと理解してケアする重要性に改めて気づき始めたころ、上司から『認定看護師を取ってみたら?』 と声をかけてもらい、頑張ってみようと資格取得を決意しました。」
 7カ月に及んだ東京での認定看護師教育過程の修了後、資格を携え職場に戻ってくると、見える景色が変わっていたと鎌田さんは笑います。「認定看護師教育課程では、認定看護師としての使命は部署や院内におけるケアの底上げだとみっちりと叩き込まれるので、帰ってきたときはあそこもここも改善できる、あれもこれもやりたいと意気込んでいました。」と懐かしそうに思い出しながら、「ただ、上手くいくことも、いかないこともありました。組織は一筋縄ではいきません。認定看護師の資格を持っているからと言って、思い通りにできるわけではありませんので、先輩や後輩、同じ認定看護師資格を持つ同僚と協力し合いながらやってきました。」とその苦労も語ってくれました。
 3年前にもうひとつ背中を押される出来事がありました。鎌田さんは主任に昇進します。認定看護師取得後に部署を異動し悩みながら試行錯誤をする毎日でした。ある程度影響力のあるポジションに就くことも大切だと、認定看護師教育過程でもたびたび教わっていましたが、やはり重要だったと身をもって理解しました。期待されることも多くなるけれど、仕事が進めやすくなる場面も多くなる。何より、より視座を高く組織を見れるようになったことで、さらに組織に貢献できるようになったのではと思っています。」と語ります。そして微笑みながら「やはり主任になる時も躊躇していたのですが、組織が背中を押してくれました。押してもらえないと前に進めないタイプなので。」とおちゃめな横顔ものぞかせます。

組織を育てていくこと

患者さんの様子をうかがう鎌田さん

 「認定看護師教育過程に進む際に、地方の病院出身者と東京や大阪など主要な大都市からの出身者では違うだろうなとおぼろげながらに思っていました。認定看護師教育課程がはじまると、その思いは的中であり、私と彼らとでは、仕事や勉強に対する意識や知識量に大きな差がありました。そういった観点から見ると、よりよいケアのために知識を組織に伝え続けていくことが重要かなと思っています。自分の学んだことと組織との橋渡しをすることが、役割のひとつだと考えています。」と組織に対する思いを語りながら、さらに続けます。
 「私のように、A課程で取得した認定看護師は特定行為研修に進むという大きな流れがありますが、私はその特定を持っていない認定看護師として、きちんとした『集中ケア』のことを伝えていきたいです。やはり患者さんを正確に診る力や、フィジカルアセスメントの力などのスキルを部署としても病院全体としても育てていきたい。そのための教育プログラムの策定や研修を行っていく。私がそうすることで組織が強くなると信じています。」
 組織の中で求められる役割と自分が貢献できる能力を俯瞰的に分析し、自らの役割を明確に自覚しながらリーダーシップを発揮することは容易なことではありません。それは認定看護師の資格を持っていたとしても、当たり前のことでもありません。「当院は地方の病院ですが、認定看護師教育過程に進むことをとても応援してくれます。また、組織としても『行かせたい』『育てたい』という気持ちがとても大きい病院で、大事に育ててくれていると思います。ですので、認定資格を持った私が、後輩に認定資格を取りたいと思わせるような姿を見せ、学び続ける組織を育てていくことで、このような文化を受け継ぎ、次世代にも伝えていきたいと思っています。」と穏やかな語り口調の中に、静かな情熱を感じます。

組織を育てて、組織に育てられて

仲間たちの相談にのる鎌田さん

 2020年にラピッドレスポンスチーム(Rapid Response System 後述RRS)が立ち上がり、今現在はよりRRSの活動改善に取り組んでいるという。RRSのメンバーでもある鎌田さんは、メンバーとしての活動だけでなくRRSの仕組みにも大きく関わっています。「当院には院内認定制度「実践指導者ナース(PLN)」という制度があります。PLNを各部署にコア人材として配置し、RRSの取り組みも一緒に行っている側面があります。その教育をしているのが、私たち認定看護師です。院内認定を受けた人たちのアセスメント能力の底上げにはじまり、その人たちが部署へ戻り、部署の底上げを行う活動をフォローしていくというのが、私たちの大事な役割のひとつです。ですので、こういった観点からも、組織を育て、ともに成長していくことが重要かと考えています。」RRSを組織として機能させるための組織づくりや教育などには、自身のメンバーとしての活動経験も役に立ったと言います。「当院のRRSは看護師がファーストタッチです。初めての患者さんのカルテから必要な情報を瞬時に読み取ると同時に、患者さんを看る。それらの総合的な情報から、ICUでの管理の必要性を判断するという一連の流れがあります。また、カルテなどからではわからない情報を、病棟の看護師と情報共有しながら収集し、普段の仕事ではあまり接することがない主治医と情報交換を行うという経験など、今までの経験とは異なる機会を得ることで、本当に個人の看護師としての力が養われたと思います。」個人の経験が組織に、組織での経験が個人の能力向上に還元されていく、有機的なつながりを生み出す懸け橋にとして活躍する鎌田さん。「現在は、PICS(集中治療後症候群)予防ケアについて自部署でチームを作り、活動をしているので、こちらの方でも成果を出していきたいです。」とその活躍は留まるところを知らなさそうです。

鎌田さん

鎌田景子
岩手医科大学附属病院
集中ケア認定看護師 

2002年 岩手医科大学附属病院 循環器医療センター心臓血管外科病棟配属
2003年 岩手医科大学附属病院 循環器医療センターICUへ異動
2016年 集中ケア認定看護師取得
2017年 岩手医科大学附属病院集中治療部へ異動
2019年 新病院移転につきGICU・HCUへ配置転換

好きな言葉は「雨垂れ石を穿つ」
あきらめずに努力を続けることで、結果が後からついてくることを信じています。


プリザーブドフラワーやドライフラワーを使用した作品作りが趣味です。毎月1〜2回、友人とレッスンに通い、季節やイベントに沿った作品作りをしていると、とても幸せな気持ちになります。自分が作った作品を長く飾れるのも魅力の1つです。

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